私たち行動生理学研究分野の研究目的は、人間や動物の行動がどのような脳の働きに基づいて生じるのかを解明することです。
個体の維持にかかわる最も基本的な動機づけ行動である摂食行動を実験モデル系として、その脳機構の研究を行っています。
摂食行動には、味覚・嗅覚・視覚などの外部からの情報、内臓・身体からの内臓感覚・内受容感覚の情報、それらの感覚情報への学習・記憶、感覚情報への情動的評価、そして日内リズムなどの多種多様な要因が関わってきます。行動はそれらの要因に関わる脳機能の総体として制御されています。全てを網羅的に解析することはとても難しく、解釈も困難です。そこで、個々の心理機能に焦点を当てつつ、その背景にある脳機能の解明を目指しています。ただし、それぞれの心理・行動は独立している訳でもありません。それぞれの相互作用や関係性も含めて、行動理解とその脳基盤を観ていく必要性があります。そのため、心理学・行動科学と神経科学との境界領域・融合的研究を目指しています。
行動のように複雑な研究対象にアプローチするには研究手法がとても重要です。本研究分野では、動物の行動の詳しい観察・分析を主軸としながら、行動薬理学の手法や電気生理学の手法などのさまざまな研究手法を用いることによって、多面的に行動の背景にある脳機能を理解したいと考えています。
さらに、他の研究機関(大学等)とも連携し、今後も行動神経科学の観点から、動物・ヒトに共通する行動基盤の理解に向けて研究を進めていきます。
キーワード:脳基盤、学習・記憶、情動、動機づけ、化学感覚、食嗜好、味覚報酬、好き嫌い、食べ過ぎ(過食)、食での葛藤(コンフリクト)